『介護をする心のうらおもて ~ありのままを大切に~』(2)
1.介護体験は自分の老いのリハーサル - 介護する側・される側の心のあり方
1)『育てたら、育てたように返す子ら』(朝刊掲載 川柳)―「すぐに自分の番になるのにネ!」
午前の礼拝でお話ししました。朝8:35 ホームの車を運転し、日中通いでご利用下さるデイサービスの方のお宅まで高齢者を迎えに参ります。ある朝、車のラジオから『テレホン身の上相談』が耳に飛び込んできた。50代の主婦からの相談。義母との同居はしないと云う条件で再婚したのに、義姉妹の急病などから長男である夫が義母を引き取ることになりそうだ。同居する位なら離婚する決意だ、どうしたらいいのか? と云う相談内容。「一日限りの敬老の日」で終わってしまっている現実を目の当たりにしました ― とご紹介しました。
この相談内容について、果たして自分だったら何と回答するだろうか? ラジオを聞いたこの日、ずーと半日考えておりました。午後3時のお茶の時間に、私は当日出勤していたスタッフにけさの相談内容を話題にしました。すると、60代後半のスタッフが一言「すぐに自分の番になるのにネ!」。これが最も相応しい、この日の「身の上相談」に対する回答だと思いました。
2)「いつか行く道へ ― 今は私(私たち)が寄り添い、いずれは誰かが私に寄り添う」
「いつか行く道へ ― 今は私(私たち)が寄り添い、いずれ誰かが私に寄り添う」。お互いのため、人間として当然な本文(人として尽くすべき義務)であることを忘れないようにしたいと思います。「親の世話・介護が大変だ。自分の生活(家庭)がダメになる!」と愚痴るけれども、あなたが大人になるために、あなたの親がどれほど苦労してあなたを育ててくれたかを忘れてしまっていませんか?と申し上げたいと思います。
「親の恩、親を敬愛」する言動を子供は観ています。栃木県足利市出身の書家・相田 みつを氏は、
『親は子供をみているつもりだけれども、子供は親をみている。親よりもきれいな、よごれない眼で』。
老いた親に対する言動を子供は観ています。「すぐに自分の番になるのにネ」。やがて自分も高齢になり、子供や周囲の人の世話になる順番が来たときに、果たしてどう取り扱われるのでしょうか。親を大切にしたらやがて自分も大切にされる。親を粗末にしたらやがて自分も粗末に扱われる。人は自分の蒔いた種を自分で刈り取る日がやってきます。これが公平な社会の道義(人が守るべき道徳の道筋)です。
それが、『父と母を敬いなさい。そうすれば、あなたは幸福になり、地上で長く生きることができる。』
と云うこの聖書の言葉。正に天の神さまの御口から発せられ、モーセに告げられた。疑問を挟む余地などない、正真正銘 神の言葉・真理であることを肝に命じる一人です。
「介護体験は自分の老いのリハーサル」とはカウンセラー・エッセイストの羽成幸子さんのうたい文句。19歳から30年間、祖父母・父母・姑の5人を次々と介護し、看取り、その間、25歳で結婚し4人の子供を育てた半生から「介護を経験すると、老いの認識が出てくる。自分もいずれこうなるのかなと云う想定ができ、不安が消える。自分の老いは自分の親から学ぶのが一番いい。親子はどこか似るもの。親の頑固さに手を焼いているなら、いずれは頑固な年寄りになるかもしれない。親の介護は何年後かの自分を世話しているようなものだから」と介護する側・介護される側の心のあり方を独自の視点で提言しておられます。 「優しいお世話に徹すれば、やがて自分も優しく世話してもらえる」、「冷遇したら、やがて自分も冷遇される」。これは、所謂 マニュアルや規則ではなく「人の道」です。
『育てたら、育てたように返す子ら』(朝刊掲載 川柳)。万人にやって来る「老いの世界」を直視して、そこから、現在を見つめ直したら、「自分の立ち居振る舞い」は、おのずから「優しさ」を求めざるを得ない筈です。いかがでしょうか? これが「介護の原点」です。
3)老いと向き合う、親から子へ向けた魂の歌 : 『手紙 ~親愛なる子供たちへ~ 』 ※
老いと向き合う「魂の歌」を知っていますか? ブラジルから届いた差出人不明のメールに感銘を受け、その内容を基に訳詞・作曲して出来上がった「魂の歌」です。その内容から“介護の歌”とも呼ばれ、介護や介護現場に身を置く人たちの心の支えとなっている歌です。平成20年に発売され、14万枚を突破するロングヒット中。8分22秒の長い曲だが、ライブで披露されると客席はしんとして集中し、静かに涙をぬぐう人や、すすり泣く人があちらこちらで見られた、と紹介されていました。
TBSテレビ『あなたが聴きたい歌 3時間半スペシャル』で、平成20年に話題になったとして、樋口 了一さんの「手紙 ~親愛なる子供たちへ~」が放映されました。年老いた親の目線からのメッセージです。あなたが小さかった時に、何にも出来なかった時にこういうことがあった、こういうことがあった、と対になって出てくる。自分が小さかった時のことを思い出して、安心感のような優しさをもらった。年老いた親の目線から歌われている「魂の歌」です。
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